優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「ふふっ」


床についてしばらくすると急に桃が笑い出し、身動きできないほどぴったり両隣にくっついている三成と謙信を交互に見ると、また笑った。


「えへへっ、だってさ、この時代って正室と側室が居るでしょ?でもこれって…逆だよね?私に正室と側室が居るみたい」


「ああ、その場合私がやっぱり正室だよね」


「何を言う。俺だ」


例えば、の話なのに本気で言い争いを始めそうな気配になってしまい、慌てて布団の中で2人の手を握ると天井をじっと見つめた。


「今…織田軍ってどのあたりに居るの?」


「報告によれば明日未明には国境近くに現れて陣を敷くだろうね。問題ないよ、策は打ってあるから」


「そっか…。じゃあこうして一緒に寝れるのもあと何回か、だね」


…みんな黙ってしまった。


唯一桃をこの時代に引き留められるかもしれない策は、桃が妊娠していれば、のみ。


まだその兆しはなく、謙信は桃の顔に頬を寄せて、唇で桃の首筋を撫でた。


「ちょ…っ、謙信さん…っ」


「こうして君に触れていられるのも残り僅かなんだよ。だからこれ位はいいでしょ?」


――気付けば浴衣の襟元をぐいっとはだけさせられて、肩にも沢山キスをされて…


もちろんそんな光景を見せられて三成が黙っているはずもなく、唇が半開きになって色っぽい表情を見せている桃の顎を取ると、強引に唇を奪った。


「んん、ん…っ」


「それはずるいんじゃない?じゃあ私はそれ以上のことをするよ?」


太股に謙信の手が這い、なおかつまだ唇を奪われている桃の耳元に息を吹きかけて、桃がぎゅっと瞳を閉じた。


「2人がかりで…っ、卑怯だよ…っ」


「私たちは君さえ喜んでくれるのならなんでもするよ。天下統一さえ、君が望むのならしたっていいんだ」


――強国の主でありながらも天下に全く興味のない男が、桃のためなら天下を獲ってもいいと言う――


それがどれほどの愛なのか…桃は気付いているだろうか。


「…これ以上はやめておこう」


「そうだね。うっかり興奮しちゃうところだったよ」


また桃も、同じ想いだった。


このまま謙信と三成に抱かれたい、と思った。
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