優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃の吐き気は一向に治まる気配がなく、お園が厠から桃を連れ出すと謙信が抱き上げて、すぐさま床に寝かされた。
「桃、大丈夫か」
「う、ん…っ、へい、き…、ごほっ」
「で…桃の容体は?」
先程薬師の診察を受けさせており、春日山城に仕える老齢の名医は髭を撫でながら首を振った。
「断言はできませぬが…症状は悪阻そのもの。しばらくはこのまま安静にお願い申し上げまする」
「そっか、ありがとう。さあ桃、この薬湯を飲んで」
幸村が桃の背中を支えて起き上がらせると苦い薬湯を呑ませて、すっかり弱ってしまった桃をまた横たえさせた。
「ごめんなさい…謙信さん…三成さん…」
「何を謝ってるの?今1番苦しいのは君なんだからゆっくり寝ていて」
――妊娠しているかもしれない。
桃も悪阻のような症状を経験したことで、それが現実味を増してきた。
「桃姫、これを」
「景勝さん…それ、蜜柑?美味しそう…」
「ふふ、食道楽なのは相変わらずだね。食べれるのはいいことだよ、私が皮をむいてあげよう」
桃の私室には謙信、三成、幸村、景勝、兼続が居座っており、とても眠れるような状況ではなかった。
でも心強い。
1人でいるとあれこれ余計なことを考えてしまいそうなので、三成に手を伸ばした。
「眠るまで傍に居てくれる?」
「もちろんだ。ずっと傍にいる」
「はい桃、あーんして」
「ん、美味しい!すっごく甘い!」
何か食べ物を口に入れると吐き気が治まり、三成が手を握ってくれた。
「頼むからしばらくは掃除などせずここから出ないでくれ」
「だってじっとしてられないんだもん」
「わかるけど、駄目だよ。あと…」
何かを言いかけた謙信が、口を閉じた。
気になった桃が謙信の膝に触れると、にこっと笑った後、腰を上げた。
「三成が傍に居るのなら安心だね。私は堂に行って来るから」
「うん。謙信さん、さっきはありがと」
「ん。じゃあまた後でね」
――新しく芽生えたかもしれないその命の誕生を願って、祈らなければ。
「桃…」
離したくない。
「桃、大丈夫か」
「う、ん…っ、へい、き…、ごほっ」
「で…桃の容体は?」
先程薬師の診察を受けさせており、春日山城に仕える老齢の名医は髭を撫でながら首を振った。
「断言はできませぬが…症状は悪阻そのもの。しばらくはこのまま安静にお願い申し上げまする」
「そっか、ありがとう。さあ桃、この薬湯を飲んで」
幸村が桃の背中を支えて起き上がらせると苦い薬湯を呑ませて、すっかり弱ってしまった桃をまた横たえさせた。
「ごめんなさい…謙信さん…三成さん…」
「何を謝ってるの?今1番苦しいのは君なんだからゆっくり寝ていて」
――妊娠しているかもしれない。
桃も悪阻のような症状を経験したことで、それが現実味を増してきた。
「桃姫、これを」
「景勝さん…それ、蜜柑?美味しそう…」
「ふふ、食道楽なのは相変わらずだね。食べれるのはいいことだよ、私が皮をむいてあげよう」
桃の私室には謙信、三成、幸村、景勝、兼続が居座っており、とても眠れるような状況ではなかった。
でも心強い。
1人でいるとあれこれ余計なことを考えてしまいそうなので、三成に手を伸ばした。
「眠るまで傍に居てくれる?」
「もちろんだ。ずっと傍にいる」
「はい桃、あーんして」
「ん、美味しい!すっごく甘い!」
何か食べ物を口に入れると吐き気が治まり、三成が手を握ってくれた。
「頼むからしばらくは掃除などせずここから出ないでくれ」
「だってじっとしてられないんだもん」
「わかるけど、駄目だよ。あと…」
何かを言いかけた謙信が、口を閉じた。
気になった桃が謙信の膝に触れると、にこっと笑った後、腰を上げた。
「三成が傍に居るのなら安心だね。私は堂に行って来るから」
「うん。謙信さん、さっきはありがと」
「ん。じゃあまた後でね」
――新しく芽生えたかもしれないその命の誕生を願って、祈らなければ。
「桃…」
離したくない。