優しい手①~戦国:石田三成~【完】
それから桃は吐いては眠るを繰り返していて、謙信はしばしば軍議を抜け出て桃を見舞い、手を握って終始優しく話しかけていた。
「桃の親御になんて挨拶しようかなあ。茶々殿に会えるのも楽しみだし、気さくな人なんでしょ?」
――謙信の乳香の香りを嗅いでいると吐き気も治まってきて、縋る思いで袖を握ると、笑顔を作った。
「とっても優しくて綺麗な人だよ。もっと色々お話したかったからうれし…、ごほっ!」
「ああ桃、もう喋らなくていいよ。1人の方がよく眠れると思うから私は席を外して…」
「謙信さん、ここに居て…。お願い…」
――見つめ合った。
見つめ合っていると、もう随分昔から知っているような気分になる。
そんなことを思ってしまった謙信は指先で蝋燭の灯りを消すと、桃の隣に潜り込んだ。
「苦しいなら背中を擦ってあげようか。こっちにおいで」
「うん。…いい匂い…」
「親御が着いたら水入らずでゆっくり眠るといいよ」
「えへ、楽しいことばっかりで嬉しいな。…全部謙信さんのおかげだよ。謙信さんが守ってくれなかったら今頃…」
――胸元があたたかい何かで濡れた感触がした。
それが何かをわかっていながら何も言わずに桃の少し伸びた髪を撫でた。
「三成が君を守っていたんだよ。私は出遅れちゃったから所詮は二番煎じ。1番になりたかったんだけど、叶わないまま君を返しちゃうことになるのかな」
…桃の肩が震えていた。
慰めることはしたくない。
だから小さく笑いながら桃の背中を撫でて優しく言った。
「来世で必ず夫婦になろう。君だけをずっと待って、待ち続けるよ」
「…謙信さん…、私…」
「うん、返事は要らないから。…きっと前世でも私は返事を求めなかったんだろうね」
顔を上げた桃の瞳は真っ赤で、優しく唇を重ねると、“もっと”とねだるように桃から舌を絡めてきた。
…溺れてはいけないとわかっていながらも、謙信は桃の唇に溺れて燃え上がるような吐息を上げさせた。
「ん…、はぁ…」
「ごめん、もう少しだけ…」
耐えられるだろうか。
桃が居ない日々に――
「桃の親御になんて挨拶しようかなあ。茶々殿に会えるのも楽しみだし、気さくな人なんでしょ?」
――謙信の乳香の香りを嗅いでいると吐き気も治まってきて、縋る思いで袖を握ると、笑顔を作った。
「とっても優しくて綺麗な人だよ。もっと色々お話したかったからうれし…、ごほっ!」
「ああ桃、もう喋らなくていいよ。1人の方がよく眠れると思うから私は席を外して…」
「謙信さん、ここに居て…。お願い…」
――見つめ合った。
見つめ合っていると、もう随分昔から知っているような気分になる。
そんなことを思ってしまった謙信は指先で蝋燭の灯りを消すと、桃の隣に潜り込んだ。
「苦しいなら背中を擦ってあげようか。こっちにおいで」
「うん。…いい匂い…」
「親御が着いたら水入らずでゆっくり眠るといいよ」
「えへ、楽しいことばっかりで嬉しいな。…全部謙信さんのおかげだよ。謙信さんが守ってくれなかったら今頃…」
――胸元があたたかい何かで濡れた感触がした。
それが何かをわかっていながら何も言わずに桃の少し伸びた髪を撫でた。
「三成が君を守っていたんだよ。私は出遅れちゃったから所詮は二番煎じ。1番になりたかったんだけど、叶わないまま君を返しちゃうことになるのかな」
…桃の肩が震えていた。
慰めることはしたくない。
だから小さく笑いながら桃の背中を撫でて優しく言った。
「来世で必ず夫婦になろう。君だけをずっと待って、待ち続けるよ」
「…謙信さん…、私…」
「うん、返事は要らないから。…きっと前世でも私は返事を求めなかったんだろうね」
顔を上げた桃の瞳は真っ赤で、優しく唇を重ねると、“もっと”とねだるように桃から舌を絡めてきた。
…溺れてはいけないとわかっていながらも、謙信は桃の唇に溺れて燃え上がるような吐息を上げさせた。
「ん…、はぁ…」
「ごめん、もう少しだけ…」
耐えられるだろうか。
桃が居ない日々に――