優しい手①~戦国:石田三成~【完】
その鈍痛には覚えがある。
まさかと思い、三成たちが心配そうな顔をしたが、桃は前かがみの不自然な体勢で立ち上がると、バッグを持って厠に駆け込んだ。
「まさか…まさか…!」
そして厠で、確認した。
生理が来た、ということを。
「生理が…私…妊娠してなかったんだ…!」
――今まであんなに思い悩んできたのに。
両親が現代へ帰ってしまい、もう戻れる手立てがなく、三成か謙信かどちらの子供かわからない子をこの時代で生んで育てようと決めていたのに――
「そっか…そっかぁ…」
ほっとしたような、少し残念なような…
何とも言えない気分に苛まれて厠から出られずにいると、外から声がかかった。
「桃、どうしたの?大丈夫?」
「!け、謙信さん…」
処置をして厠を出ると謙信がすぐに肩を抱いてきて顔を覗き込んだ。
「桃?」
「謙信さん…私…妊娠してなかったみたい」
そう告げると一瞬きょとんとしたが、すぐさま白い美貌に苦笑が広がり、桃は何度も何度も頭を下げた。
「ごめんなさい!本当に…ごめんなさい…」
「そっか、残念だったけど…君が謝ることではないよ」
「…え…?」
また桃の肩を抱いて寺の中へと向かいながら、謙信は青ざめる桃の頬を撫でた。
「私たちが君の気を乱し、身体に変調を来させてしまったんだ。今まで色々あったからね。色々…」
「でも…沢山迷惑かけたよ。三成さん…怒るかな」
「もしこの程度で怒るようなら、その程度の男だということだよ。ま、私は全然怒らないけどね」
ちらりと嫌味を言った謙信に笑みを誘われると寺へ入り、まだ心配そうにしている三成の前に座るとまた頭を下げた。
「三成さん…ごめんなさい。生理が来たの。だから…赤ちゃんはできてなかったみたい」
「……そうなのか……ん、わかった」
ほんのり顔が赤くなった三成の隣に座った謙信は盃を手にしながら小さな小さな声で囁いた。
「むっつり」
「な、なんだと!?俺は…別に…」
「喧嘩しないでね。あと…やっぱりごめんなさい。2人を悩ませちゃったよね…」
しゅんとなった桃の頭に代わる代わる謙信と三成の優しい手が乗った。
「そんなことはないよ。私たちは良き父になったはず。もちろん、これからもね」
これからも――
まさかと思い、三成たちが心配そうな顔をしたが、桃は前かがみの不自然な体勢で立ち上がると、バッグを持って厠に駆け込んだ。
「まさか…まさか…!」
そして厠で、確認した。
生理が来た、ということを。
「生理が…私…妊娠してなかったんだ…!」
――今まであんなに思い悩んできたのに。
両親が現代へ帰ってしまい、もう戻れる手立てがなく、三成か謙信かどちらの子供かわからない子をこの時代で生んで育てようと決めていたのに――
「そっか…そっかぁ…」
ほっとしたような、少し残念なような…
何とも言えない気分に苛まれて厠から出られずにいると、外から声がかかった。
「桃、どうしたの?大丈夫?」
「!け、謙信さん…」
処置をして厠を出ると謙信がすぐに肩を抱いてきて顔を覗き込んだ。
「桃?」
「謙信さん…私…妊娠してなかったみたい」
そう告げると一瞬きょとんとしたが、すぐさま白い美貌に苦笑が広がり、桃は何度も何度も頭を下げた。
「ごめんなさい!本当に…ごめんなさい…」
「そっか、残念だったけど…君が謝ることではないよ」
「…え…?」
また桃の肩を抱いて寺の中へと向かいながら、謙信は青ざめる桃の頬を撫でた。
「私たちが君の気を乱し、身体に変調を来させてしまったんだ。今まで色々あったからね。色々…」
「でも…沢山迷惑かけたよ。三成さん…怒るかな」
「もしこの程度で怒るようなら、その程度の男だということだよ。ま、私は全然怒らないけどね」
ちらりと嫌味を言った謙信に笑みを誘われると寺へ入り、まだ心配そうにしている三成の前に座るとまた頭を下げた。
「三成さん…ごめんなさい。生理が来たの。だから…赤ちゃんはできてなかったみたい」
「……そうなのか……ん、わかった」
ほんのり顔が赤くなった三成の隣に座った謙信は盃を手にしながら小さな小さな声で囁いた。
「むっつり」
「な、なんだと!?俺は…別に…」
「喧嘩しないでね。あと…やっぱりごめんなさい。2人を悩ませちゃったよね…」
しゅんとなった桃の頭に代わる代わる謙信と三成の優しい手が乗った。
「そんなことはないよ。私たちは良き父になったはず。もちろん、これからもね」
これからも――