優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信が上座で茶々と仙桃院、そして城を守っていた重臣たちを集めて説明をしている間、桃は謙信の隣に座りながら景勝と景虎コンビが肩を並べて座っているのをにまにましながら見ていた。

景虎はまた居なくなってしまうのでその目に焼き付けておこうとじっと見ていると、2人は少し顔を赤くしながらもじもじして謙信から叱られた。


「こら、こっちに集中するように」


「はっ、も、申しわけありませぬ父上!」


景虎が畳につきそうなほどに頭を下げ、堅苦しい話が続いていたので謙信がふっと息を吐くと肘掛けに頬杖をついた。


「まあ、そんな感じだよ。姉上、茶々殿、ご理解頂けましたか?」


「よくやりました。信長を倒したのはあなたの定め。戦乱の世になる前に先手を打つことは私も賛成です。ですが…最後まで諦めずにできますか?」


「おや?私を疑っておられるのですか?私はやる気ですが、私が天下を治めることに納得しない者は刀や鉄砲を手に歯向かってくるでしょう。それまではゆっくりすることにしますよ」


「いたたた…」


話の途中に桃が腹を押さえて前のめりになったので、三成が桃をひょいと抱きかかえると上座の謙信を見下ろした。


「休ませてくる」


「うん、そうしてあげて。私も後で行くから」


――顔をしかめる桃のために足早に廊下を歩き、途中女中に湯たんぽを持ってくるように指示をすると部屋へ着き、桃を寝かせた。

顔色は真っ青でしきりに腹を擦っているので、三成も手を伸ばして腹を擦ってやると、桃が儚く笑いかけてきた。


「ごめんね三成さん…帰って来て早々また迷惑を…」


「迷惑ではない。女子のその……月のもののつらさは俺にはわからぬ。わからぬが、分かち合いたい。傍に居てやるから少し眠れ」


「うん…」


湯たんぽが届き、桃の腰や腹にあててやっていると、しばらくすると眠りに落ちた。

三成はずっと手を握ってやっていて、まだ顔色の悪い桃を見つめていると謙信が部屋に入ってきた。


「寝てるね。まだつらそうかな?」


「ああ。このまま寝かせておいてやろう」


「じゃあ私たちはどうする?一杯やろうか?」


「この飲兵衛が」


文句は言ったが誘いを断らず、隣の謙信の部屋へと移り、2人で盃を交わした。
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