優しい手①~戦国:石田三成~【完】
顔は涙でぐちゃぐちゃだし鼻水だってちょっぴり垂れてしまっていたが、謙信と三成は笑いながら紙で顔を拭いてくれた。


「いいの…?それで…本当に…」


「いいに決まってるよ。今思えば最初からそうしていれば君を迷わせることもなかったんだろうけど…私たちは君と出会った当初は君を独り占めにしようと躍起になっていたから。こうすればよかったんだよ。これが自然な形なんだ」


「…俺は正直に言えば…謙信の正室にと勧めていたのに、内心は心穏やかではなかった。そんな状態でここに留まるつもりは…」


「!やだ、駄目!私は謙信さんと三成さんの手を絶対に離さないんだから!嫌いになったのならそう言って!そしたら…頑張って…離すから…」


謙信と三成の手を握って離さないでいると、三成は空いている片方の手を桃の頭を撫でて、謙信は握られた桃の手を口元に引き寄せて掌に口づけをした。


「俺も選んでくれたのなら…離れぬ。同じ位に愛している…ということなのだろう?」


「そうだよ。あ、あ、愛してるの。だから…」


「決まりだね。申し訳ないけど兼続にだけは事情を話すけどいいかな。ああ元気出て来た。君の月のものが終わるまでに全てを終わらせよう。そして終わらせたら祝言を挙げよう。あ、形式的には私の方が先ってことで」


「…それでいい。その後は俺と桃が密かに祝言を挙げる」


――あまりにもあっさりと2人が自分の気持ちを受け入れてくれたので、逆に桃の方が信じられない想いで瞳を見開いていると、謙信はまた酒を呷りながら三成を挑発した。


「私の方が祝言が早いということは、私の子が先にできるかもしれないということだね」


「別にどちらでもいい。桃は俺たちの両方の子をいつかは生むのだからそれで義に適っているだろう?」


「そういえばそうだねえ。おっと、もうどっぷり夜が暮れているね。休もうか」


2人に手を引かれて立ち上がった桃は、じわじわと押し寄せてくる実感に身体を震わせ、2人は顔を覗き込んできた。


「どうしたの?寒い?」


「ううん…。私…私…今すごく幸せ。私にイケメンで素敵な旦那様が2人も…」


「そうだよ、君はこの世で1番幸せな女子だからね。そして私たちも」


――皆で大きな満月を見上げた。
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