優しい手①~戦国:石田三成~【完】
“謙信が桃姫を正室に迎え入れる”


城下町はその報に色めき立ち、早速鯛や髪飾りといった祝いの献上品が城に続々と運び込まれていた。

桃はそれをいちいち目を丸くしながら見ていたのだが…また桃にも政宗や元親や幸村などが押し寄せて、謙信との祝言を喜んでくれた。


「よく三成が諦めたものだな。桃…そなたはそれでよいのか?」


「え?…うん…もう決めたことだから。三成さんもわかってくれたよ。それに三成さんもここに残って傍に居てくれるって約束してくれたから、私が謙信さんのお嫁さんになる以外はなんにも変らないから」


「そうか…うむ、そなたが決めたことならば反対するまい。よし、奥州からも何か良いものを届けさせる俺は祝言を見届けてから帰るとしよう」


「ありがとう政宗さん」


一度皆が桃の部屋を退出すると、入れ替わりに人目を憚りながら三成がするりと入ってきた。


…目が合うとなんだか互いに照れてしまい、桃は畳を指で突きまくりながら視線を上げられずにいた。


「あ、あの…元気?」


「…あ、ああ。そなたもその…元気そうだな」


「うん、生理も終わったし、今すっごく身体を動かしたい気分なの」


「では俺がそなたの身体を動かしてやろうか?」


その言葉の深意に気付かずきょとんとした桃とは対照的に三成の顔が一気に真っ赤になり、それでそういう意味だと悟った桃は三成の肩を思いきり突くと畳に倒れ込ませた。


「馬鹿馬鹿馬鹿!エッチ!三成さんってやっぱりエッチ!」


「れ、連発するな!こっちに来い!」


時々強引になる三成の手が身体に回って引き寄せられると、よく鍛えられた胸に顔を押し付けられて、謙信とは違う三成の香りを思いきり吸い込んだ。

謙信とは似て非なる男だが、出会った当初あんなにぶっきらぼうだった男は実はこんなにも優しい男で、優しい手を持った男だ。


三成の指で髪を梳いてもらったり頬を撫でてもらったりするとうっとりなってしまって、すぐそこに唇が近付いてきていたことにも気付かなかった。


「ん……三成さ…」


「そなたは俺の妻でもある。しばらく耐えてきたのだから、これ位…」


強引に絡まる舌と、それに似つかわしくない優しい手――


“人に見られてはならない”というスリルが逆に桃と三成を燃え上がらせていた。
< 655 / 671 >

この作品をシェア

pagetop