優しい手①~戦国:石田三成~【完】
改めて同じ白い浴衣姿の謙信を見上げると、永きに渡って待ってくれていた人を思い出した。


前世で…

あの業火に包まれた寺の中で運命を共にしてくれた大切な人。

あれから何回転生したか…ようやく再び巡り合えた謙信は最初から自分があの時の巫女だと知っていたのか?


聴きたいことが山ほどあったが、もう聴けない。

何故なら…襖を静かに閉めるや否や、激しく唇を重ねてきたからだ。


「けんし、さ…っ」


「三成とは痛み分けだけれど、私は君と出会った時から君が捜し続けていた女子だとすぐにわかったよ。教えてあげようか?私は君と出会うまで、ずっと独身を貫き通したんだ」


「え…、ほん、とうに…?」


「うん、多分ね」


茶目っ気たっぷりにウインクしてみせた謙信に心を解されると、その気の緩みを狙っていたのか、掬い上げるようにお姫様抱っこをされて床が敷いてある寝所へと移動した。


「天守閣は三成に譲ってあげたから、私の正室となった今はこれからここで毎晩共に眠ろう。今この時は三成のことは忘れるんだよ。いいね?」


「……うん」


「返事が遅いね。夫婦になった初夜に私と夫婦喧嘩をしたいのかな?」


「!ち、違うよ…。謙信さ、ん…」


謙信の白い肌が闇に慣れた目に映り、謙信の白い手が浴衣の帯を外して視線が身体をゆっくり撫でているのが見えた。

…もう数えきれないほど謙信に抱かれたが、一向に慣れないのは、謙信の手法が毎回違っているからだ。


優しい時もあれば激しい時もあるし、そっけない時もあればいやというほど甘やかしてくれたりする。


――だが今日の謙信は、激しい謙信だ。

妊娠しているかもしれないとわかった時からずっとずっと、優しくしてくれた人。


肌も燃えるように熱く、鳴き声を上げた桃を見降ろす静かな瞳は身体とは裏腹で、そのギャップに桃は眩暈を感じて謙信の背中に爪を立てた。



「新しい、戦法だね…。私の身体に傷をつけられるのは、君だけだ…」


「謙信さん、謙信さ、謙信……っ」


「そう…呼んで。もっと…もっとだ…」



ようやく夫婦になれたのだから、もっともっと…

もっともっと、求め合おう。


時空を超えて出会わせてくれた毘沙門天に感謝を。

想いに応えてくれたことに、感謝を。

全てに、感謝を――
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