優しい手①~戦国:石田三成~【完】
歴戦で鍛えられた謙信は細い身体に見合わずスタミナがあり、あの手この手で責められた桃は息も絶え絶えに謙信の胸を震える手で押した。


「謙信さ、ん、も、駄目…」


「もう?今まで堪えてた分を全然解消できてないんだけどなあ」


そう言いつつも身体は汗に濡れていて、短く荒い息を吐く桃の頬に口づけをした謙信は、手を伸ばして脇に放られていた浴衣を手にすると、それを広げて桃の身体にかけてやった。


「初夜って、もっとこう…優しいものだと思ってた…」


「最初から私は宣言していたはずだよ。“私の夜伽は激しい”って」


「そう、だけど…。ずっと…これからもこんな感じなの?」


夜目に慣れた目は互いの身体をはっきりと映しており、謙信は桃を直視していたが、桃は謙信を直視できずに浴衣で身体を隠すとむくりと起き上がった。


「ずっとこんな感じだよ。もっと激しいのがお望みなのかな?意外と激しいんだね」


「!ち、違うから!でも汗でべとべと…身体拭かなきゃ」


「拭かなくてもいいよ、洗い流せばいいんじゃない?」


――謙信は浴衣を緩く着て桃を抱えて立ち上がった。

どこへ行くかその口ぶりで分かった桃は、謙信の首に抱き着くと周囲の目を気にして首を振った。


「お風呂?でもみんなでまだ起きてるだろうし…こんな格好で恥ずかしいよ…!」


「みんな寝てるよ。いや、違うかな。みんな寝たふりをしてるから大丈夫。今日だけは私を止める者は誰も居ないからね」


ようやく正室を迎えた謙信。

姉の仙桃院から言わせれば、謙信は小さな頃から“妻を娶るつもりはない”と宣言し、寄ってくる女子を悉く退けてきた逸話の持ち主だ。


あの頃から何かを悟っていたのか…

誰かを待っていたのか…


湯殿に着くと、身体にかけてあっただけの桃の浴衣を剥いで放り投げて、腕に抱いたまま湯船へ入って桃が嬉しそうに歓声を上げるのを瞳を細めて見つめた。


「気持ちいい…」


「さっきとどっちが気持ちいいか言ってごらん」


「え…、や、やだ、言えない!……どっちだと思う?」


「こっちも気持ちいいけど、さっきのが気持ちいいよ。比べ物にならない位ね」


こっちだのさっきだの、主語を隠したまま言葉遊びを楽しんだ後、2人は見つめ合ってまた唇を重ね合い、愛に溺れた。
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