優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成が謙信に対して嫉妬していることに、桃は純粋に嬉しさを感じていた。


人を寄せ付けず、潔癖すぎる性格は出会った時からずっと変わらなかったけれど、自分に対しては不器用ながらも…優しくしてくれていて、


冷たくされていた、のではなく…

謙信の気を引こうとした自分に怒り、そして謙信に嫉妬していたのだと知って、桃はほっと息をついた。


「…何を安堵している。そなたは謙信のことが…好きなんだろう?」


「え…だってあの人…かっこいいし…ちょっとエッチだけどなんかほっとするし…」


「…俺と居る時よりほっとするのか?」


――急に天地がひっくり返り、気がつけば桃は布団の中に引きずり込まれ、三成から覆い被さられていた。


「そんな美しく着飾って…俺の屋敷で他の男の気を引こうなど百年早い。それとも、俺のことを嘲笑っているのか?」


「そ、そんなことな…」


「では俺のことをどう思っている?」


少しでも腕から逃れようと横向きになった桃の襟元から三成の手がするりと入った。


「あ…っ、や…っ!」


「どう思っているのか、と聞いている。…どうした」


さわさわと動く手に、桃の身体は大きく揺らいだ。

その間にも三成の唇は桃の首筋を這い、耳に息を吹きかけてくる。


「あ…っ!」


「何故謙信はそなたの弱点が耳であることを知っているのだ?言ってみろ」


「や、だ…っ、三成さ…、手、止めて…っ」


…本当は三成の優しい手が動く様を止めてほしくなかった。


息も荒くなってきた時…突然三成の手が止まった。


「…?三成、さん……?」


「なんだ?止めてほしいと言ったから止めた。不満でもあるか?」


「……」


耳たぶを優しくかじられ、またもや大きく痙攣する身体を三成は抑えつけたまままた手を動かした。


「……んん…っ!」


「俺はそなたを抱きたい。謙信などには、渡せぬ」


顎を取られ、ゆっくりと三成の方を向かされた桃はもう息も絶え絶えで、終始瞳は潤み、唇は開いたままだ。


そこに唇が重なってくる。


激しいキスに、桃の頭の中は謙信ではなく、三成でいっぱいになった。
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