優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃は言われた通りに自分の布団に入った。


…だが三成の瞳はまっすぐにこちらを向いている。


それだけで、先程触れられたあちこちが熱くなってきて、桃は思わずか細い声を上げた。


「…どうした?」


「え…な、なんでもないよ…」


もう完全に三成のことを“男”としてしか見れなくなってしまっている桃は、
これからの毎夜、ああして三成に触れられてしまうのかと思うと…少しだけ期待してしまっている自分が居て驚く。


「ねえ三成さん…手…繋いでいい?」


「…先程あんなことをしたのに…触れてもいいのか?」


「うん…手なら…いいよ」


――長く細く引きしまった腕が伸ばされてきた。

桃も腕を伸ばして、左手と右手が重なる。


指を絡めて繋いできたその手はあたたかく、優しかった。


「三成さんの手…好きだなあ。かっこいい」


「手だけか?早く俺のことを全て好きになれ」


…実はもうかなり参ってしまっているのだが…謙信にときめいているのも事実で、桃は押し黙る。


「そなたを陥落させる方法などいくらでもある」


繋いでいた手がさらに引き寄せられて、三成は桃の掌に口づけをした。


「小さな手だな。食ってしまいたい」


暗闇の中で手だけ愛されて、また桃は身をよじった。


何故だか抑制がいつものように働かない三成は、少し身体を起こしてついまた桃の唇を奪ってしまう。


「ん…ん…っ」


「良い香りがする。香をつけているのか?…謙信のために?」


「ち、ちが…っ、んっ!」


――違わない。


三成、謙信、幸村に褒められたくて、バッグの中に入れてあった桃の香りのする香水を少しだけつけた。


もちろん誉められて嬉しいのだが…今は状況が危うい。


現に何度も舌を絡められては拒絶する力をどんどん失っていってしまっている。


「宣言しておくが…唇くらいは毎夜奪うからな」


――こんなキスが毎日続く…?


そんなことをされたら間違いなくもっともっと三成のことを好きになってしまう。


帰らなければならないのに。


どうしたらいいのわからず、熱いキスは長い間続いた。
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