優しい手①~戦国:石田三成~【完】
いつもは必ず最初に拒絶されるのに…

今夜ばかりは身を任せてきた桃の様子に、三成の全身に熱い血潮が駆け巡り、腰を抱いて力強く抱きしめた。


「そんなに謙信が怖かったのか?」


「え…ううん、そういうわけじゃないけど…」


口ごもる桃のやわらかい身体に手を這わせながら、三成は謙信につけられた首筋に残る痕の上から強く吸った。


「言ってみろ。今宵はどうしてそんなに昂っている?」


三成に会う前から身体が熱くなっていた桃は、固く優しい手の感触に震える息を吐きながら正直に答えた。


「なんか身体が熱くて…自分でもわかんない…」


「…俺も同じだ…」


――三成が蝋燭の炎を指先で消した。


真っ暗になった部屋で、桃は口から心臓が出そうになりながらも顔を手で覆う。


「やだ、恥ずかしい…!」


「今さら…。俺はそなたの全てを見たというのに」


少し乱暴に浴衣をはだけさせられて肩に口づけの雨を降らせる三成の頭を抱きしめた桃は、また吐息を漏らした。


「我慢するな…そなたの声が聞きたい」


「やだ…も、三成さ…っ」


覆い被さる三成の身体――

そして脚に当たる感触に、桃の身体が硬直した。


「桃?」


「み、三成さん…脚に…脚になんか…」


――その意味を悟った三成がやや顔を赤らめて桃の耳元でいっそう声を低めて囁いた。


「そなたとて俺の全てを風呂場で見ただろう?」


「…っ」


つい思い出した桃が真っ赤になりながら顔を逸らしたその様子さえ愛しく、

さらに張り詰めてゆく感情と身体に、抑制のたかが外れるのも時間の問題だと思った時――


突然顔色を変えた桃が強く三成の身体を押して起き上がった。


「桃?」


「私ちょっと…ごめんなさい!」


駆け出す。


そして駆け込んだ場所は、トイレ…つまり、手水場だった。


「な、なっちゃった…!」


――もちろん用意なんかしていない。
幾つかは予備で持っていたが…

手早く応急処置をすると呆然としている三成の元に戻り、肩をがくがくと揺らした。


「茶々さんのとこに連れてって!」

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