優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「…寵姫だって」


――迎えに来た三成が前を歩き、桃はその背に向けて三成が立ち止まる一言を投げつけた。


「な…それが…何だ?」


「何だ?…じゃないでしょー?なんで意味教えてくれなかったの?」


隣に立つと余計に三成が動揺しまくり、桃の頭を持って違う向きに変えた。


「照れてるの?恥ずかしがり屋さんなんだから」


…かなり年下の桃から翻弄されまくりながらまた足音高く歩きだし、ちょこちょこと後ろをついてくる桃に振り向かずに、


今まで誰にもかけたことのないやわらかい声で優しく問い掛ける。


「身体はつらくないのか?茶々殿のお側で大人しくしていた方がいい」


「お腹は痛くないし…第一生理痛とかないから大丈夫だよ」


――この時代女子がこうも明け透けと自身の身体の事情を男に話すことはなく、またもや三成は顔色を変えた。


「ん、そ、そうか」


「男の人にも生理痛があってもいいのになー。女は痛いことばっかだよ」


桃に何のリアクションも返すことができずにさらに早足になった三成を着物で追いかけるのは骨が折れて、

立ち止まると引き戻してきてまだ顔が赤いまま桃の手を引っ張った。


「茶々さんがお城を案内してくれるらしいんだけど三成さんは?」


「俺は秀吉様のお側に行かねばならない。………桃」


「はい?」


長い溜めの後ようやくまともに桃の瞳を見下ろした三成は、人目を憚るように背を屈めて桃の耳元で、超セクシーな声で囁いた。


「そなたには俺の子を産んでほしいと思っているぞ」


今度は桃の顔色が一気に変わり、三成は清々したかのように笑うと桃の耳たぶにキスをした。


「きゃっ!」


「早く女子の病が明けるといいな。……何を言わせるっ!」


…勝手に言って勝手に猛烈に照れて居なくなってしまった三成がおかしくてたまらなくなった桃は長い廊下に座り込んで笑いを堪えていた。


「桃姫…そこで何をしているのですか?」


三成と同じく最初から親切にしてくれた茶々から声をかけられた桃が慌てて立ち上がる。


まだ笑い続けている桃を見ていると茶々も楽しい気分になって、二人はしばらく笑い続けていた。
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