光の魔法を君に 【番外編】
その時、淡い恋心は一瞬で崩れ落ちたのだ。跡形も残らぬほどに。
だから、私は城を出た。
勿論、出る期間の政務はしっかりやってから出てきました。
こう見えても頭の回転は速いの。なんて笑って言えちゃうくらい。だって、母様と父様の子よ。兄様や姉様も賢いけれどそれに劣らないの。これだけは唯一の自分に対する誇りだ。
城の回りにある森のなかを走りながらジュハがたずねる。
「空羽、行く当てあるんか?」
ジュハは心配そうに聞いてくる。何よ、その瞳は。
「心配ないわ。暫くはアダヌス街のお店で働くもの。」
「そのカッコで行くつもりなんか?」
「……馬鹿にしないで。ちゃんと変えるわよ。」
「………いいんか?」
意味深に、でも遠回しに聞いてくるジュハ。
「……いいの。結局は私の馬鹿な想いなの。」
「篤に、言わんでいいんか。」
―――篤、
名を聞いただけで小さく飛び跳ねる胸の高鳴り。
自嘲気味に笑って応える。
「言わないわ。そのほうがあっちは嬉しいでしょう。」
せいぜいっ、泉おじ様と鈴おば様と蒼兄様と凜姉様に苛められればいいのよ。
さっき、母様にだした伝言の後にもうひとつ。兄姉にだした伝言があるのだ。