光の魔法を君に 【番外編】


「………あのときも。篤………は、」

「……あのとき?」


篤が少し怪訝なかおになる。


そう、私が家出を決意したあの言葉。


―――お前みたいなやつに惚れ込むなんてな。


「私が………求婚、されたとき。」

「…………あぁ、」


思い当たる節があるのだろう。



馬鹿、あのせいで私は城を飛び出したんだから。


「………あれはだな、自分に対してだ。」

「え?」


暗闇なので篤がどんな顔をしているのかはわからない。
ちょうど今に限って、月明かりは雲に隠されている。


「………身分差、ってゆーのを感じたんだ。それに、そいつに渡す前に拐ってしまえれば、と考えてしまってだな…………」


ゴニョゴニョと語尾はごまかす体になってしまった。けど、言わんとすることはわかった。
つまりは、


「ヤキモチ………?」


と少し笑みを含みながら返すと、

「………悪いか。」


不貞腐れた声が返ってきたので、声を出して笑う。



――なんだ、一緒だわ。



不安が春の雪解けのように少しずつ、なくなっていく。
嬉しい、と感じる心が弾む。


「篤、すき。だいすき。」


今まで背中に回していた手をスルリ、と篤の首に回して。
つま先立ちになりながら顔が見える位置で微笑んで。





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