*short.short*


*Childhood friend*



幼なじみって困る。
それが男の子ならなおさら。


いちばん近くに居る異性なのに、あまりにも近すぎて、素直になれない。


幼い頃は性別なんか関係なくて、いつも一緒に遊んでいたのに、成長するにつれ、次第にお互いの男女の違いに気付いてしまって、時々どうしたらいいかわからなくなる。


幼なじみのあいつの事を、好きだと自覚してしまったあたしは、あいつがあたしの事をどう思っているのか、最近はそればかりが気になってしまう。


中三の12月。
受験勉強でそれどころじゃないのに、気付けばあいつの事ばかり考えてしまう。


あいつに合わせて受験する高校のランクを上げたあたしは、死に物狂いで勉強しなくちゃいけないのに………。


「おら、帰るぞ」


放課後、図書室でひとり勉強していたら、コツンと頭を軽く小突かれて、振り返ればあいつが立ってた。


「何で居んの?まだ帰ってなかったの?」

「サッカーして遊んでた、お前の上履きあったから、ここかなって…」

「サッカー?あんた余裕だね?」

「ははっ、お前よりかはな、腹へった、牛丼食い行こ」

「え〜?牛丼?マックがいい」

「ハンバーガーじゃ晩飯まで持てない、奢るから、ほら行くぞ?」


牛丼屋なんて……。
色気も何にもない所に誘われて、嬉しくないはずなのに嬉くなっちゃう。


学校を出て二人並んで歩いていると。


「お前手袋は?」

「今日忘れた」

「バカだな、受験生が風邪引いたらどうすんだ?俺の片方貸してやる」

「……ありがと」


片方の手袋を受けとり、はめてみるけどブカブカで、またひとつ、昔とは違うあいつに気付く。


「こっちの手はこっち」


あいつが素手の方のあたしの手を握ってきて、それをそのままあいつは自分の制服のポケットに突っ込んだ。


ポケットの中はカイロが入っていてあったかい。


あいつはポケットの中であたしの手をギュッと強く握って、あたしもそれに応えるように握り返した。


チラリとあいつの横顔を見てみると。


「……耳、赤いよ?」

「……寒いからだ」


あたし達。
もう幼なじみって呼ばないよね?



*end*


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