*short.short*
*Valentine mission*
mission.1
登校途中。
挨拶代わりにさりなげなくそれを渡そうとするけど、緊張と焦りで、上手くタイミングが掴めずあえなく失敗。
mission.2
休み時間。
移動教室からマッハで戻ってきて、机の中に忍ばせておこうとするけど、机の中に既に数個のそれを見つけてしまってかなり凹む。
mission.3
次の休み時間。
凹んでばかりはいられない、今日と言う日は1年に1度の特別な日。
気をとり直して、教室を出て行く目標の後をつけるけど、目標は男子トイレに潜入。
出待ちをする訳にもいかず、またもや失敗。
mission.4
昼休み。
いつもは購買へと向かう目標なのに、今日に限って弁当持参。
(目標母め……、余計なことを…)
食べ終わると目標はそのまま机に突っ伏して、昼休みの間中意識を手放す。
mission.5
放課後。
ヤバイ。もう後がない。
これで渡せなかったら今日が終わってしまう。
帰りの支度をして廊下を歩く目標の背中を見つめながら、鞄の中のそれを手に持ったまま、目標の数メートル後ろを歩く。
不意に目標はピタリと足を止めて。
「なぁ?」
肩越しにこちらを振り向いた。
「いつになったら、それ…、くれんの?」
「は?……、それって?」
「……チョコ、朝からずっと待ってるんだけど?」
「……待ってる?…」
「うん。早くちょーだい」
「………ど…、どうぞ…」
あたしは恐る恐る目標に、可愛くラッピングされたそれを差し出した。
「さんきゅー。じゃ、一緒に帰ろうか?」
それを受け取り目標はにっこり笑うと、あたしの手を握り歩き出す。
「全く、ストーカーかよ、早く渡せっつーの」
「……すみません…」
「確認だけど……、義理とかじゃないよな?」
「無茶苦茶本命…」
「そか」
目標はそう言って満足気に微笑むと、あたしの手を握る手に少しだけ力を込める。
− Valentine mission complete−
*end*