*short.short*
*A snowy crystal*
−−シャッ!
勢いよくカーテンを開けると、そこは一面の銀世界。
結露で濡れてしまっている窓を開けて、サンダルを履いてベランダに出る。
いつも見慣れた風景なのに、滅多に雪なんか積もらないこの街が、なんだか知らない街みたい。
いまだ降り注いでいる雪を眺めなから、柵に身体を預け、片手を伸ばすと、掌にはらはらと雪が落ちる。
きゅっと掴んでみたら意図も簡単に消えて無くなってしまった。
今度は両手を差し出し、掌に雪が落ちるのをじっと見つめていると。
「なにしてんの?」
さっきまでベッドの中に居た彼の声がして。
「あ……。おはよ、見て。雪」
振り返り、両手に乗ったままの雪を彼の目の前に持っていくけど、掌の雪は直ぐに溶けて無くなってしまった。
「……そんなカッコで…、風邪引くぞ?中入れ」
自分は上半身裸じゃない。
とは言わずにおいて、彼に背中を向けて再び両手を広げる。
「綺麗だね……、でも…、直ぐに消えて無くなっちゃうね…」
そう呟いて空から舞い落ちてくる雪を見上げていると、ふわりと後ろから暖かいぬくもり。
彼がブランケットで私を包んで後ろから抱きしめてくれて。
「溶けない雪……、欲しい?」
「溶けない雪?」
「うん。左手、出して」
彼に言われるがまま、ブランケットの中から左手を出すと彼はその手を取り。
「ほら、これは溶けて無くならない」
薬指に嵌められたひんやりと冷たい感触。
掌を広げてよく見てみると、キラキラと輝く小さな雪の結晶。
「………結婚…、しようか?」
*end*