*short.short*
*Heart*
初めてデートしたのは同時流行っていた、ベタベタなラブストーリーの映画。
肩が触れるか触れないかの距離に、左側半分が緊張してしまって、ドキドキがハンパなくて、ストーリーなんか全然頭に入って来なかった。
初めてキスしたのは真夏の暑い日、下校途中の分かれ道、グイッと腕を引っ張られ、唇と唇が触れるだけのものだった。
一瞬何が起こったのかわからず、暫く放心していたら、もう一度、やさしく唇を塞がれて。
二度めのキスの方が、破裂するんじゃないかと思うくらいに、心臓がバクバクしてしまった。
初めての甘い痛みと共に、痺れたように身体が微熱を持ってしまった月明かりの夜。
その射し込む淡い光に照らされた、彼の寝顔をいつまでも見つめていたら、胸がきゅうって締め付けられて、物凄く嬉しいのに涙が溢れて止まらなかった。
それから幾つもの季節が流れても。
何年経っても。
私の心臓は相変わらず、彼の前では速度を増してしまう。
馴れる事なんてなくて。
「嬉しいよ。ありがと」
何度目かになるかわかならないバレンタインも、私を抱きしめてくれて、耳元でそう囁く。
ねぇ。
何年経っても大好きよ。
このドキドキとうるさい心臓が止まるその時まで、ずっと一緒に居てくれる?
*end*