*short.short*
*The beginning of love*
生中を一気に飲み干し。
「ぶはぁーっ!」
「ぷ……、オッサンかよ」
ドカッとジョッキをテーブルの上に置いたら、隣に座る同期で気の合う彼がボソリと呟いた。
「何?……、何か言った?」
「いや、別に…、おかわりは?」
「生中!」
「はいはい…」
会社の帰り、同じチームの数人といつもの居酒屋。
ひとつのプロジェクトが大成功を納めたお祝いも兼ねて、会社の帰りに同じチームの数人で、いつもの居酒屋でささやかな祝賀会。
気を許せる仲間と気取らない居酒屋で、上司の悪口や、私のお局の嫌味の攻撃の物まねに、隣の彼が激しく突っ込みを入れたりと、他の客が引くくらいに盛り上がった。
下品に大口を開けて、ガハハと笑いながら、グイグイとジョッキを空にしていく。
「あはは〜♪ちょっとトイレっ!」
「おい、大丈夫か?」
よろよろと立ち上がると、隣の彼が心配げに私を下から見上げていて。
「あはは〜…らいじょうぶ〜♪」
ふらふらとあちこちのテーブルにぶつかりながら、トイレに入る。
ちょっと…、飲みすぎたか……
軽く反省しつつ、ふらつく足でトイレから出ると。
「わ…、びっくりした…トイレ?」
目の前に彼が立ってた。
「お前飲み過ぎ…、帰るぞ?」
「はい?…何言って…」
「いいから、ほら」
グイッと腕を引かれて、よろけてしまった私は彼の腕の中。
「あー…もう、我慢できねーわ」
「は?……んっ!」
いきなり塞がれた唇に、一気に酔いが醒めてしまった。
「このまま、俺んち直行な」
「……勝手に…、決めんな……」
わずかばかりの抵抗を見せるけど、彼は華麗にスルーして、そのまま私を連れ去った。
*end*