*short.short*
*After school*
「ホンっと、ゴメン!埋め合わせは必ずするから!」
そう言って親友の彼女は申し訳なさそうに両手を合わせた。
最近新しく出来たカフェのケーキ半額チケットが今日までだったから、放課後一緒に行こうねって約束してたのに。
午後から生憎の雨で。
サッカー部の彼氏の部活が中止になったからと、彼氏と一緒に相合い傘で二人仲良く帰ってしまって、そんな二人の寄り添う背中をあたしは一人で見送った。
所詮女同士の友情なんて……
……こんなモンよね。
フンッ、って鼻で息を吐く。
いいもん。
一人で行くもん。
どうせあたしは色気より食い気だもん。
鞄から折り畳み傘を出して広げていると。
「おー!ちょうどよかった!」
横から声をかけられて見てみると、同じクラスであたしの斜め前の席の彼。
「は?…、何がちょうどよかったの?」
「お前帰り、一人?」
その一言に、あたしカチンときて。
「どうせあたしは一人モンだよ!色気より食い気よ!悪いっ?」
「は?何怒ってんの?」
「怒ってなんかないしっ!」
再びフンッ、って鼻を鳴らして彼に背を向け外に出た。
「ちょっ…、待って」
彼が追い付き、傘をあたしの手ごと掴んで、ピタリと張り付く。
「わかった、腹減ってんだろ、お前?なんかオゴるから、傘入れてよ」
身体を曲げて、あたしの顔を下からニッと笑って覗き込む彼。
「………ケーキ、食べたい」
「オッケー、ケーキな」
そのまま二人で校門を出た。
「ねぇ?……、いい加減、手。離してくんない?」
「いいじゃん、別に、一人モンなんだろ?」
「……悪かったわね」
「俺も一人モンだし、ちょうどいいじゃん?」
「は?何それ?」
「今日から二人モンになる?」
「何よ…、二人モンって…」
「つまり、こーゆー事」
彼はもう片方の手であたしの肩をグイッと引き寄せた。
ヤバイ。
色気に走りそうだ。
*end*