*short.short*
*Heavy rain*
会社のエントランスの自動ドアの前に立ち尽くす事約30分。
ドアの向こう側はこれでもかっ、てくらいの土砂降りで。
おろしたてのワンピースで、髪も顔も、完璧にアフターチェンジしたのに。
傘は無いし。
一歩でも外に出たら全てが台無しになってしまう事間違いなし。
どうしよう。
合コンに行けないじゃん。
彼氏いない歴1年にピリオドを打つべく、今日は某一流企業との合コンなのに。
ちくしょう。
雨のヤツめ……、あたしの計画を阻止しようとするなんて。
……いい度胸してるじゃん。
「フフフ……」
「こえーよ、お前…」
後ろから声がして、振り返ると同じ課の先輩。
「仁王立ちで腕組で、その笑い……、女帝か?お前は?」
「あ。先輩。お疲れ様です、って、女帝?……、酷くないですか?」
「いやいや、その不敵な笑い、女帝だろ?……それよりどうした?帰らないのか?」
「週末に真っ直ぐ帰る訳ないじゃないですか?今から○○と合コンです」
「はあ?…○○?止めとけ止めとけ、あそこ根暗でオタクでマザコンばっかだぞ?」
……根暗…オタク…マザコン。
「……それ、ホントですか?」
「ホントもホント」
「……はぁ…」
ないわー…
ガックリと肩を落とす。
完全に意気消沈。
「……せっかく気合い入れてたのに」
「ああ、だからいつもより…」
先輩は何か言いかけて。
「いつもより、何ですか?」
「……何でもねーよ。で?結局行くの?行かないの?」
「……行きません…」
「じゃ、俺と合コンしよ」
「は?」
「ほら、行くぞ」
先輩はジャケットを脱いで、それをあたしの頭にバサッと乗せて。
「えっ?ちょっ…」
あたしを抱えるように外に出た。
「やだやだ、濡れる〜っ!ワンピが靴がメイクが〜!」
「他の奴に見られる前に台無しにしてやる」
「何それっ?!それに先輩とたった二人で合コンなんてっ」
「そんじゃデートに変更」
「えぇ〜〜っ?」
*end*