*short.short*
*Future*
すっかり肌寒くなってきた10月も終わる頃。
今日は久し振りに定時に上がれたもんだから、アイツの好きなスイーツショップのマカロンを土産に、家へと続く道のりを足早に歩く。
公園で帰り支度を始める小学生を横目に、角を曲がると何処からか夕飯の匂いが漂ってきて俺の鼻を擽る。
今日の晩飯は何だろうかと考えながら歩いていると、数メートル先にスーパーの袋を下げた、よく知る小さな背中。
「おい。何やってる!」
と、思わず大きな声を出してしまい、小さな背中はぴくっと一瞬肩を震わせて、俺の方を振り返った。
「あ…、なんだ、あなたか、お帰りなさい。今日は早かったね」
随分目立つようになってきたお腹をこちらに向けて、満面の笑みを浮かべる彼女が手に持った袋を走り寄って奪う俺。
「重いもの持つなって言ってるだろ?あーあ。何コレ?米?まだ買わなくてもよかっただろ?」
買い出しは休日にまとめ買いをしてる筈なのに、袋の中には他にも牛乳やら卵やら、重いものばかり。
「ちょっと、牛乳だけ買うつもりが、色々安くて…、つい…」
「俺にメールくれれば、帰りに買ってきたのに…」
「お散歩がてらかね、ずっと家にばかり閉じこもってたら太っちゃうし…、運動もしないと」
「太るのは仕方ないだろ?お腹にもうひとり居るんだから、ほら、こっち持って」
スーパーの袋とマカロンの箱を交換させて、彼女の右手を握って歩きだす。
「…ふふふ。来年の今頃は間にひとり増えてるね?」
「だな」
夕焼けに染まる家並み。
自転車で家路に急ぐ小学生。
漂ってくるカレーの匂い。
二人で手を繋いで歩く帰り道。
最愛の彼女との間にもうすぐ産まれてくる俺達二人の宝物。
これを幸せと呼ばずになんて呼べばいい?
*end*