*short.short*
*A pink hairpin*
今朝は目覚ましが鳴る前にスッキリと目覚められた。
いつもは歪んで何度も結び直す制服のリボンを一回で結べれた。
新品のソックスをおろした。
前髪の分け目を変えてみた。
ピンクのヘアピンで留めたてみた。
朝御飯はあたしが大好きなお母さんお手製の、厚切りのフレンチトーストだった。
テレビで毎朝やってる、今日の占いで一位だった。
【気になる異性と急接近】
【ラッキーアイテムはピンクのヘアピン】
なんとなくいつもと違う特別な朝。
きっといいことがありそうな予感。
毎朝見かける通学電車の彼に、今日こそは声を掛けてみようか。
うん。
きっと上手くいくはず。
何度も目が合ったこともあるし。
きっと彼もあたしを意識してるはず。
ドキドキと高鳴る心臓を抱えたまま、車内を見回すと。
…………あ。
同じつり革に掴まり、仲良く身体をくっ付けた彼と小柄な可愛い女の子。
「ねぇ?君さ?いつもこの電車だよね?」
思考停止していて呆然と立ち尽くしていると、後ろから声を掛けられた。
振り向くとそこには背の高いイケメン。
でも何故かイケメンの前髪にはピンクのヘアピン。
「ずっと君のこと、気になってたんだ」
少し赤い顔してはにかむイケメン。
「もしかして、あなたさそり座?」
「え?何で知ってんの?」
「あたしもなの、ほら」
自分のヘアピンを指差す。
「あ……、ははは」
「ぷ……、ふふふ」
たった今失恋したばかりなのに、可笑しくて、笑ってしまった。
*end*