*short.short*


*A pink hairpin*



今朝は目覚ましが鳴る前にスッキリと目覚められた。



いつもは歪んで何度も結び直す制服のリボンを一回で結べれた。



新品のソックスをおろした。



前髪の分け目を変えてみた。



ピンクのヘアピンで留めたてみた。



朝御飯はあたしが大好きなお母さんお手製の、厚切りのフレンチトーストだった。



テレビで毎朝やってる、今日の占いで一位だった。



【気になる異性と急接近】

【ラッキーアイテムはピンクのヘアピン】



なんとなくいつもと違う特別な朝。
きっといいことがありそうな予感。



毎朝見かける通学電車の彼に、今日こそは声を掛けてみようか。



うん。
きっと上手くいくはず。



何度も目が合ったこともあるし。
きっと彼もあたしを意識してるはず。



ドキドキと高鳴る心臓を抱えたまま、車内を見回すと。



…………あ。



同じつり革に掴まり、仲良く身体をくっ付けた彼と小柄な可愛い女の子。



「ねぇ?君さ?いつもこの電車だよね?」



思考停止していて呆然と立ち尽くしていると、後ろから声を掛けられた。



振り向くとそこには背の高いイケメン。



でも何故かイケメンの前髪にはピンクのヘアピン。



「ずっと君のこと、気になってたんだ」



少し赤い顔してはにかむイケメン。



「もしかして、あなたさそり座?」

「え?何で知ってんの?」

「あたしもなの、ほら」



自分のヘアピンを指差す。



「あ……、ははは」

「ぷ……、ふふふ」



たった今失恋したばかりなのに、可笑しくて、笑ってしまった。




*end*
< 6 / 58 >

この作品をシェア

pagetop