*short.short*


*A present is Santa Claus.*



涙が溢れないようにずっと上を向いて歩いてたら、石か何かに蹴躓いて、思いっきりコケてしまって顔面強打。


鼻は擦りむけ、タイツは伝線してしまい、バッグの中身が飛び出して、その拍子に転がり落ちてしまった携帯は車に引かれてしまった。


「ふえっ…ふぅ〜〜っ…」


一気に涙が滝のように溢れ出す。


「うわーーんっ!」


もう抑えられなくて、拳を目に当てて、子供みたいに大口を開けて大声を出して泣きじゃくる。


二又かけられてた。

あっさり捨てられた。

しかもあたしの方が浮気って……。


イルミネーションがキラキラと輝く街路樹の下で一人、わんわんと泣くあたしを怪訝な顔付きで一瞥する通行人。


クリスマスプレゼントも買ってたのに。
お家パーティ―しようねって約束してたのに。
ミニスカサンタのコスも用意してたのに。
全部無駄になってしまった。


バカみたい、バカみたい、バカみたい!!


彼と過ごす初めてのクリスマスに、何も知らずに浮き足だってしまっていた自分が情けなくて腹が立つ。


「大丈夫?」


背中から声が聞こえて振り向くと、そこには大きな袋を抱えた若いイケメンサンタクロース。


「……ねぇ、サンタさん、あたしにプレゼントちょうだいよ」

「……何が、欲しいの?」

「聖なる夜を、一緒に過ごしてくれる人……」


サンタは暫く腕を組んで考え込み、それからあたしの前に立ち、白いつけ髭を取り、大きな袋の中身を取り出すと、その中に自分が入り、しゃがみ込んでにっこりと微笑むと。


「どうぞ?」


その人懐こい笑顔に、さっきまでわんわん泣いていたあたしもつられて笑ってしまった。


サンタにサンタをもらってしまった。


どうやって持って帰ろうか?




*end*

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