親愛なる貴方様。
私は何かのイベントかと思い、周りを見渡したけどそのような気配はない。
それどころか少年は不思議な格好をしてるのに誰も気に止めない。私は差し出された手紙を見つめた。
『あの、なんですかこれは』
宛先のない不審な手紙。
こんな街中で直接届けるなんて普通じゃない。見た目も何だか怪しいし。
『條原 敦也様からお預かりしております』
---------------シノハラ アツヤ……?
その名前を聞いた瞬間、私は勢いよくベンチから離れた。スタスタと逃げるように怪しい人物から遠ざかる。
『お待ち下さい、長谷川様』
追いかけてくる足音に私は怒りを押さえられず振り向いた。
『なんなんですか?ふざけるのは止めて下さい。こんなイタズラして楽しいですか?』
フツフツと湧いてくる感情。私はギュッと拳を握りしめていた。そんな私とは裏腹に少年は冷静だった。
『わたくしは預かったお手紙をお届けしてるだけでございます』
そう言って、再び手紙を私に差し出す。