親愛なる貴方様。





意味が分からない。どうして私に?どうして今日に限ってあいつの名前を聞かされなきゃいけないの?


私は泣きそうになりながら、街を徘徊した。



『クリスマス限定商品売ってます。2日間限りですよ』

『大切な人にプレゼントいかがですか?』

『今日だけサンタのストラップ付きです。恋人同士ならお揃いで差し上げます』


戦争の如く、どの店先も客引きの嵐。いつもは立ち止まらない人達も今日は次々足を止める。


そう言えば去年の今頃もこんな感じだったっけ。


それでカップルじゃないのにカップルの振りして割り引いて貰ったり、大きなケーキを二人で食べたり。


ううん、去年だけじゃない。

毎年あいつと出逢ってからずっとクリスマスもお正月も楽しいイベントは全て一緒に過ごした。



『これをお使い下さい』


聞こえてきた声と共に白いハンカチが見えた。私は溢れてきた涙を拭って、また強いフリをする。



『これ以上付きまとうと警察呼びますよ』


そんな度胸なんてないけれど、誰かに思いをぶつけないと壊れてしまいそうだ。



『わたくしはお手紙を受け取っていただけるまで帰れません。それが仕事ですので』


この人が何者なのか、私はまだ分からない。

だけど一つだけ分かるのは手紙を受けとるまでこの人は私の前に現れ続けるだろう。


微かな恐怖を感じながら、私は乱暴に手紙を受け取った。


『これでいいんでしょ?だから早く消えて』


これ以上イライラしたくない。





< 4 / 15 >

この作品をシェア

pagetop