Alien執筆言い訳日記(ブログ的な何か)
9月14日 不可逆性(詩)
変わり果てて、もう戻ってこないもの、失われて、もう再び見ることも触れることも出来ないもの、そんなものから始まる物語を愛する。
失われたものを取り戻そうとする不毛な行為と願いと、喪失と不可逆性を突き抜けてその向こうに行こうとする希望を両手に下げて、彷徨する主人公を愛する。
渇きと飢えのなかで一瞬の愛の幻と、失望の都を通り抜けて、期待と裏切りに嗚咽する声が響く。その逆に、思いもしない好意と見知らぬ友情とが不意の微笑みを鳥のように運んでくる瞬間がある。
人生の旅を私は愛する。卑怯な計算も、矮小な嫉妬もすべてが温かい。孤高の中で崩壊していく自尊心を、たったひとつしかない独自性を、神聖さに満ち溢れた啓示を、自分の中の小さな導きの声を、闇の中で自分だけしか見えない道を、根拠のない確信の中で、疑いと悪魔に足を取られながら歩く。
そんな旅を私は愛する。
たどり着くことが幻想だと知り、歩くことが離れていくことだと知るまで、遠くにある星が自分の中の光であることを驚嘆の中で知り、その光は闇であり、全てであり、またどこにもないものだと知るまで。
そして再び、今度はあてのない旅へと歩き始める自分を見る。たどり着くことはなく目的もない、ただの名もない自分が名もない旅へと歩き出す。
永遠だけを手荷物にして。