レンアイゲーム
◆from 刹那


“呼び出しあったから、雑用頑張ってて”


そう言って、飯島はどこかへ行った。



雑用なんて、ひとりでできるかよ。



「雑用さ~ん。これ資料倉庫まで運んで~」


先輩が、大量の資料を指差した。


「はーい」


……飯島。

まだ戻って来ねーのか?


じゃないとこれ、俺がひとりでやらなきゃいけない。

いくら男でも、これは……持てないだろ。


2回に分けて運ぶのも面倒だし。



「……あれ、飯島さんはどうしたの?」


資料を運んで、と頼んできた先輩が、綺麗なボブカットの髪をふわふわさせながら首を傾げた。



「あ~、用事あるんで遅れるみたいです」


「そうなの?じゃあ、うちが資料運ぶの手伝うよ」


そう言って先輩は、資料を半分持つ。


「助かります、先輩」


「いいよ。ひとりじゃ大変だもんね」


行こ、と先輩にうながされて、俺も資料を持って足を進めた。



教室を出て2人になったとたん、先輩が微妙に態度を変える。


「あの……あのさ、森君」

先輩が、めっちゃ真面目な顔で俺を見つめる。


……ああ、俺、今告られっかも。

なんとなくそう感じた。

さすが俺。
罪な男。


「うち、今彼氏募集中なんだけどさ……」


「そうなんですか。意外ですね」

心底驚いたように、俺は言う。


「はは、森君ってば。……森君は……、彼女いる?」


先輩が上目遣いで見つめてくる。


怖いだけだって思っていたその仕草は、先輩がするとなんともナチュラルだった。



本人は、上目遣いやってるなんて思ってないんだろうな。




< 98 / 109 >

この作品をシェア

pagetop