レンアイゲーム
◆from 刹那
“呼び出しあったから、雑用頑張ってて”
そう言って、飯島はどこかへ行った。
雑用なんて、ひとりでできるかよ。
「雑用さ~ん。これ資料倉庫まで運んで~」
先輩が、大量の資料を指差した。
「はーい」
……飯島。
まだ戻って来ねーのか?
じゃないとこれ、俺がひとりでやらなきゃいけない。
いくら男でも、これは……持てないだろ。
2回に分けて運ぶのも面倒だし。
「……あれ、飯島さんはどうしたの?」
資料を運んで、と頼んできた先輩が、綺麗なボブカットの髪をふわふわさせながら首を傾げた。
「あ~、用事あるんで遅れるみたいです」
「そうなの?じゃあ、うちが資料運ぶの手伝うよ」
そう言って先輩は、資料を半分持つ。
「助かります、先輩」
「いいよ。ひとりじゃ大変だもんね」
行こ、と先輩にうながされて、俺も資料を持って足を進めた。
教室を出て2人になったとたん、先輩が微妙に態度を変える。
「あの……あのさ、森君」
先輩が、めっちゃ真面目な顔で俺を見つめる。
……ああ、俺、今告られっかも。
なんとなくそう感じた。
さすが俺。
罪な男。
「うち、今彼氏募集中なんだけどさ……」
「そうなんですか。意外ですね」
心底驚いたように、俺は言う。
「はは、森君ってば。……森君は……、彼女いる?」
先輩が上目遣いで見つめてくる。
怖いだけだって思っていたその仕草は、先輩がするとなんともナチュラルだった。
本人は、上目遣いやってるなんて思ってないんだろうな。