3年分のキス
「あ、俺西崎たかおっていうんだけど、知ってる?」
二人きり、キッチンで続く立ち話。
知ってるも何も、ね…。
知ってるようで知らないのかな。
「あ、はい…」
彼が優しく相槌を打ってくれるたびにいちいちうるさい心臓。
どうにも、わかっていても、わたしの心はいつも結局たかおちゃん一色なんだ。
結婚してからも、忘れたふりをしていたけど、忘れたことなんてたぶん一瞬もなかった。
あの時、わたしが頑張っていればよかったのかな…。
急に沈黙が二人を包む。
「あ、あの」
それに耐えきれず思わず声を出してしまう。