3年分のキス





「あ、俺西崎たかおっていうんだけど、知ってる?」




二人きり、キッチンで続く立ち話。

知ってるも何も、ね…。
知ってるようで知らないのかな。




「あ、はい…」




彼が優しく相槌を打ってくれるたびにいちいちうるさい心臓。
どうにも、わかっていても、わたしの心はいつも結局たかおちゃん一色なんだ。

結婚してからも、忘れたふりをしていたけど、忘れたことなんてたぶん一瞬もなかった。
あの時、わたしが頑張っていればよかったのかな…。


急に沈黙が二人を包む。




「あ、あの」




それに耐えきれず思わず声を出してしまう。





< 253 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop