3年分のキス
彼の笑顔を目に焼き付けて。
彼の声を心に録音して。
ぎゅっと一度、目を閉じた。
脳内、今起こった出来事を、奥のほうにしまって。
1分ぐらいして、目を開けた。
「うん」
自分で自分を納得させるように頷くと、
まだ果物を切るのが途中だったことに気づいた。
作業を再開しよう…、
そう思ってまな板のほうに目をやると
そこには綺麗に剥かれた桃があった。
「あ…」
わたしはきっと、彼の顔ばかり見ていて気付かなかったんだ。
彼がやってくれてたんだ、きっと。
わたしがまた、怪我してしまわないように。
わたしは、頬を、緩めずにはいられなかった。