3年分のキス
焦燥





彼が去ったあと、わたしは暗いキッチンを出て、ある人の姿を探していた。


その人の姿は、意外にも簡単に見つかった。
会場近くの、トイレの前だった。

その人は、わたしの顔を見ると、驚いた顔をして話しかけてきた。




「もしかして、心結さん?」




彼に似た、優しい声だった。

そう、たかおちゃんのお母さん。
3年前、わたしが一番苦しかったとき、支えてくれた人。




「はい、お久しぶりです…」




わたしがお辞儀をすると、彼女は笑って″久しぶりね″といった。






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