CHAIN
馬に揺られムーセイオンに着いた頃、
四人ともふらふらだった。
 
やっとの事で着いた
アレキサンドリア文庫は、
それはそれは大きな建物だった。

庭園を木々が囲み、
ナイル川から引いた水路もある。
実に美しい所だ。
 
「ん?王子って、エジプト人ですか?」
「私はマケドニアの血筋ですが。
 どうかしましたか?」
「ギリシア風の建物が多いので、
 ギリシア人なのかと。」
「ここはギリシア人の移住を
奨励した都なので、そうなのでしょう。」

図書館は天井が高くて過ごしやすかった。
 
馬に揺られていた時に、
石が跳ねるので服の中にしまっていた
ネックレスを思わず表に出す。

それに気づいた風が驚いて聞いた。
「桜ちゃん、そのネックレス……」
「ん、凛に貰ったの。どうかした?」
 
「いや……それ、凛が十歳の誕生日の時に
姉ちゃんがあげたやつで、いつも
 服の中に入れて隠してるけど、
 何処に行くにも付けてるんだよ。」

そうなんだ……そんなに大切な物を、
私に……
 
嬉しくなってつい、
遠くに座って天井を見上げる凛を見た。
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