すれ違い
「‥‥‥‥‥‥‥‥。」



「雪葉?」



いきなり話さなくなったあたしに拓人が声を掛けた



だけどそんな声は耳に入らない



あたしは自分の目に映ったものをただただ凝視し続ける



‥‥‥‥やばい



‥‥‥‥無理だよ



「ご、ごめん。今日ちょっと用事あるから無理。じゃ、呼ばれてたからもう切るねっ。ばいばい」



そう言って一方的に電話を切る



だって理由聞かれても答えられないし



このまま会ったら百年の恋も冷められる



あたしが見たものは、鏡に映る、泣きはらして小岩さん並みに目の腫れた自分の姿だった───‥‥‥
< 54 / 87 >

この作品をシェア

pagetop