雨と傘と
それから、午前中は授業なんて全然集中できなかった。ドキドキして、ふわふわする。顔がにやけて仕様がなくて自分が気持ち悪かった。





こんなにも、浮ついていた自分が情けない。





昼休み、勢いよく教室を飛び出すと、人とぶつかった。私って、ホントに落ち着きが無さ過ぎる。

「ごめんなさいっ!」

慌てて謝り、顔を上げた。







朔ちゃんだった。






でも、生まれてから見続けてきたその顔は、
悲しみで溢れていた。こんな朔ちゃん見たことない…


その瞬間、私の心はつぶれるんじゃないかってくらい、締め付けられた。


いつも優しい笑顔の朔ちゃん。
穏やかな朔ちゃん。
凪いだ海に浮かぶ月のような人だ。





こんなに感情を剥き出しにしている朔ちゃんを初めて見た。


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