雨と傘と
私は…昨日、ものすごく大切なことを見落としていた。




朔ちゃん…朔ちゃんを。





彼の悲しい瞳が、瞳の奥の光が、私の心を射抜く。

春にいの瞳と同じに。

そして、私の気持ちが溢れ出た。




そっか、そうだよね。
私は、朔ちゃんを好きなんだ。春にいも朔ちゃんも、好きなんだ。



そして、朔ちゃんも私のことが好きなんだ。





朔ちゃんは、一瞬でその狼狽を隠すと、いつものように優しく笑って教室に入っていった。

私の足は床に張り付いたように動かなくて、その場にただただ立ち尽くした。
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