雨と傘と
午後の授業は、午前中にも増して頭に入らなかった。

どうしたらいい。
自分の気持ちに気付かなかったなんて。本当に気付いた時のは、春にいを選んだ後だった。朔ちゃんのこと、後から気付いたんだから、私は春にいのほうが好きなの?

ううん。比べるなんてできない。

どっちも好き。とても好き。



さっきの朔ちゃんの様子…いつも冷静な彼らしくなかった。私をちゃんと見ていなかった。だから、きっと彼は私の気持ちを分かっていない。私が春にいだけを好きでいると思っているに違いない。だから、あんなに悲しい顔をしていたんだ。

なら、このままにする?

朔ちゃんへの気持ちを封印してしまえばいい。朔ちゃんが、私に対する想いを隠すように。でも、誤魔化せる?朔ちゃんのあの悲しみ痛み…真正面から見てしまって、それを知らんぷりできる自信が無い。



どうすればいいの?



どんな風にしても、二人を傷つけるばかりだ。
私の存在が二人の兄弟を苦しめる。
大好きな人を、苦しめる。


涙を堪えるのに、必死だった。


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