雨と傘と

朔人③

幸葉と兄貴が付き合いだして一カ月が経った。俺は毎日、自分の感情を押し殺すことに成功している。苦しみは一向に消えないが…

毎日手を繋いで登下校する二人は、構内でも有名になった。

二人は目立つ。

兄貴は野球部の中でもピッチャーとして実力を認められているし、明るく憎めない性格で、そして信頼も厚い。身長は特別高いってわけじゃないけど、整った顔をしていて女子の人気も高い。まあ、景さんには負けてる気がするが。
そんな兄貴があの甘い態度で幸葉にデレデレするから、そりゃ目を引くし噂にもなるだろう。

幸葉は、小さい。真っ直ぐな黒髪。無邪気な笑顔。そんな可愛い容姿だけど、ソフトボールをしている姿は勇ましい。小さい頃から俺や兄貴とキャッチボールをしてきたから、一年の中では飛びぬけて上手いようだ。

…似合いすぎる二人。



それを毎日、間近で見るんだ。
直視はできないけど…



俺は修行僧のように、苦行に耐える。
そのうちに悟りを開けるのではないだろうか…
< 25 / 53 >

この作品をシェア

pagetop