雨と傘と

幸葉④

完全に無防備だった。

気付いた時には、練習着姿の朔ちゃんが、すぐ近くに立っていた。

朔ちゃんには見られてはいけなかったのに。

裸の心を、何も纏っていない心を、曝け出した。

誤魔化しきれないほどに。



朔ちゃんに隠してきたのに。勘の鋭い彼に気付かれないように、細心の注意を払ってきたのに。私は…なんてバカなことを…



私の心が朔ちゃんの心を呼び寄せ、二つの想いは溶け合った。
もう元の形には、戻せない。


曝け出した裸の心は、朔ちゃんの煌めく喜びに触れ、後戻りできないくらい輝きを放つ。



止まらなかった。身体も心も。
すべてが朔ちゃんを求める。


深くとろけるような、強引なキス。
朔ちゃんの体温に、全身が震える。

無意識に、もっととねだるように、彼に腕を回していた。





朔ちゃんは、そっと唇を離すと、私をその瞳に一瞬映して。

帽子を拾うと教室を出て行った。


こちらを振り返らずに。
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