雨と傘と
「おはよう」

毎日、朔ちゃんが迎えに来てくれる。

入学して一週間。
少しこの生活に慣れてきた。

「ねぇ、春にいは?一緒に登校しないの?」

小学校の時は三人で登下校していたけど、中学生になってからまだ一度も春にいと一緒になったことはない。

「ああ、クラス委員の仕事があるって。」

「春にい、忙しいんだね。」

春にいは昔から学級委員になることが多かったけど、中学生になってもそれは変わらないみたい。いつも人の中心にいる春にい。

けど、中学生の春にいを私はあまり知らない。
こうして朔ちゃんが与えてくれる情報しか持っていない。

思えば、春にいが中学生になった一年前からは生活のリズムが違って、なかなか会え
なくなった。よく瑞浪家(春にいと朔ちゃんの家)に行ってはいても、春にいは部活やら友達と遊びに行くやらであまり家にいなかった。


同じ中学生になれば、一緒に過ごせると思ったのにな。


この一週間で分かったことは、学年が違うとなかなか会えないということ。
校舎も教室のある階が違う。かといって全校集会などでは、人が多いし、まして先輩達がうようよいる空間には恐くてなかなか近づけない。


少し曇った私の表情に気付いたのか、朔ちゃんが優しい言葉を掛けてくれた。

「今日から俺ら一年生も部活だし、兄貴も一緒に帰れると思うよ。」

「そっか!」

今まで仮入部だったのが、今日から本格的に部活が始まるんだ。

「楽しみ。でも緊張するよー…」

「幸葉なら、大丈夫だ。」

朔ちゃんがそう言ってくれるから、

「ありがと。」

いつも自身が持てるんだ。
昔からいつもそう。

朔ちゃんの言葉は私を包んでくれるんだ。
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