雨と傘と
「今までずっと、一番傍にいて、あいつを支えてきたのは、俺じゃない。

お前だよ、朔人。」



俺は言葉を失った。
それは、小さな頃から自負してきたことで、兄貴には負けない唯一の俺の強みであったから。咄嗟に否定ができなかった。

それは、兄貴が用意したとっておきの理由で。俺を納得させるために選んだ理由で。真正面からくる正論だった。綺麗すぎる言い訳だった。


「っ…!例え、そうだとしても!兄貴は、幸葉が好きなんだろ?」

「ああ、好きだよ。でも、お前も幸葉のことが好きだろう。」

「好きだけど、だからって兄貴が諦めるのは違う。」

「いや…。このままで、苦しむのはやっぱり幸葉だよ。あいつ、俺だけじゃなくて、お前のことも好きだから。」




その時…



「ごめんくださーい!」


幸葉の声が外から聞こえた。


俺たちは顔を見合わせる。



そうしている間に、幸葉が俺の部屋をノックした。


「さくちゃーん、いるんでしょ?」


遠慮なく入ってくる彼女を見る俺達。

「二人とも!何て顔してるの?私が来たのに、ちっとも嬉しそうじゃないし。」

そう言って拗ねる彼女があまりにもいつも通りで、拍子抜けした。



「今日は、二人に言いたいことがあってきたんだから。」
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