雨と傘と
「「ふたまた!?」」
俺と兄貴の声が被った。
「そうだよ。二股。だって春にいと朔ちゃんどちらかを選ぶなんてできないもん。」
至極真面目に、そう言った。
…幸葉が、壊れた。
普段の彼女と言えば、かなり慎重な性格で必ず確実な道を選択する。常識的な行動をする。
その幸葉が二股宣言をするなんて…どうしたんだ。
「ゆ、幸葉、二股っていうのは、こっそりするもんだよ。」
兄貴も爆弾発言に相当動揺しているようで、突っ込むところを思いっきり間違えている。おいおい、しっかりしてくれっ。
「兄貴!そういう問題じゃないだろ。幸葉、それは違うと思う。」
彼女はこちらを睨みつけて
「だって、他の人に取られたくない。だから二人とも彼氏にする。」
今まで生きてきた中で最大のわがままを言い放つ。
こんなにわがままを言う彼女を初めて見た。普段もっと甘えてくれたらいいのにと思うけど、これは…すごすぎる。
思わず、ため息が出た。
自分の意見を押しつけるようなことはしないけど…一度決めたらなかなか曲げない。結構、頑固。そんな彼女の性格を思い出し、どう説得したらいいか考える。
「幸葉、それはできないんだよ。」
兄貴が困り果てた様子で、切り出した。