契約恋愛~思い出に溺れて~
日常
朝食の支度を終え、台所から出ようとすると母親の声が背中から聞こえた。
「紗彩(さあや)、父さんでるから先に食べてるわよ」
「うん。私、紗優を起こしてくる」
一緒に住んでいる両親が先に食事を始め、
私は2階への階段をわざと音を立てて駆け上がり、娘が寝ている部屋の扉を勢いよく開いた。
「紗優、朝よ。起きなさい」
「うーん」
寝起きの悪い紗優は、5分前に目覚ましが鳴ったであろうにも関わらず、まだ布団の中でごろごろしていた。
それを横目で見ながら、まずは仏壇のところへ行き、ロウソクに火をともす。
お線香を一本立てるのは、朝の日課だ。