契約恋愛~思い出に溺れて~
「なったとしたら、多分別れるわ」
「なんで?」
「だって、無理だもの」
ユウを忘れるのは。
自分でもどうしようもないくらい、あの人が好きだ。
彼のいた場所を変えたくない。
彼の思い出を塗り替えられたくない。
「紗優ちゃんが可哀想だろ」
「紗優の事は放っておいてよ。あの子には私がいるんだから」
そう言いながらも、胸は痛い。
大丈夫よ、と言いきれるほどには、あの子に構ってやれていない。
出かけるときに、寂しそうな顔で笑う紗優。
分かってる。
紗優は寂しいんだ。
だけどどうすればいい。
紗優の父親はユウだけだ。
そこにだけは、誰にも入ってきてほしくない。