契約恋愛~思い出に溺れて~
英治くんが先を歩くようにして、店から出た。
外は真夜中だけれど、繁華街の明かりがあるので、それほど暗くもない。
英治くんの足取りはかなりしっかりしていて、達雄を支えていることもそれほど辛くないようだった。
「ハイ、鍵」
英治くんは達雄のポケットを勝手に探って、皮のキーホルダーのついた鍵を見つけ、私に差し出した。
私はそれを受け取って、渋々運転席に乗り込む。
英治くんは後部座席に達雄を寝かせるようにして、自分は助手席に乗り込んだ。
そして手なれた手つきでナビをいじり、自分のアパートを経由地、達雄の家を目的地に設定した。
「紗彩ちゃん、安全運転でね」
「知らないわよ。久しぶりの運転だもの」
まずはコインパークからでないと。
前に向かうのはいいんだけど、バックが怖い。
しかも車は前向きに突っ込んであったので、駐車場をでるだけに10分ほど費やした。