契約恋愛~思い出に溺れて~
ナビの指示通りに運転して、車は英治くんのアパートの前についた。
「運転、うまかったじゃん。達雄の家まで気をつけてね」
「う、は、はい」
もはや精神は消耗しきっていた。
ここから、達雄の家まではナビによると後15分。
もうひと踏ん張りというところだろうか。
「でもなんで英治くんの家が先だったの?
よく考えれば、二人で達雄の家に向かって、タクシー相乗りすれば良かったんじゃない?」
そうすれば、私もちょっとは安心できる。
泥酔している達雄では、はっきり言って運転のサポートになる訳が無いし。
英治くんだったら、少なくとも指示できるくらいの冷静さを保っているから、安心だ。
「紗彩ちゃんと二人きりになったら、俺も押さえがきかなくなるかも知れないしねぇ」
「なっ……!!」
「あはは。冗談だよ」
突然何を言い出すのか。
咄嗟に赤くなった自分が、信じられない。
英治くんは、茶化すように笑った後、真顔になって私を見た。