契約恋愛~思い出に溺れて~
「どうして英治くんはそれを私に頼むの?」
そう言うと、英治くんは苦笑した。
「残酷? 紗彩ちゃんが達雄の彼女なのにな」
「ううん。そういう意味じゃない。人の事なのに熱心だなって思うだけ」
「俺も何度かは言ったよ? でも達雄は頑なに否定するだけ。
ここまで関わるとこっちも意地にもなってる。それに」
「……」
「紗彩ちゃんが一番、達雄を説得できそうだなって思って」
英治くんの茶色い髪が夜風に揺れる。
同時に私の心臓もドキリと跳ねた。
どこまで見透かされているのか分からない。
英治くんに恐怖に似た感情が湧きあがってきて、私はその場を離れたくなった。