契約恋愛~思い出に溺れて~
食事を終えて仕事に行く準備をする。
「母さん、今日は職場で飲み会があって遅くなるから、紗優の事お願いします」
「ハイハイ。ホント男みたいに働いて。……まあ仕方ないけどねぇ」
ユウは定職についていなかったので、彼と結婚した後もずっと、生活費を稼ぐのは私だった。
私たちの間では、彼が家事をするということで納得ずくだった男女逆転の生活も、
昔堅気の母から見れば虫酸の走るような事だったのだろう。
相変わらず、私がバリバリ働くのは好きではないらしい。
とはいえ、今となっては私しか紗優の親は居ないのだから、働かざるを得ないのだけれども。
「ホラ紗優、行くよ」
「まってぇ。ママ」
年少さんの紗優。
それでも、自分でカバンを持って自分で靴を履く。
同じ年の子に比べればしっかりしてるのだと思う。
まあそれは、私が構ってあげられないばかりに出来るようになった事なのだろうけど。