契約恋愛~思い出に溺れて~
プツリという通信を遮断する音と共に湧きあがった感情に、私は驚いた。
……寂しい、なんて。
寂しいと、思ってしまうなんて。
心臓のドキドキが止まらない。
早く平静に戻りたいのに、もう自宅のすぐ傍まで来ていて、着くまでにはおさまらなかった。
運賃を払って、こっそりと家に入る。
もう家族は全員寝静まっていて、私はなるべく物音をたてないようにシャワーだけを浴びた。
『いい人だったんだな』
英治くんの言葉が、耳から離れない。
頭からかぶるようにシャワーを浴びて、何もかもを洗い流したいのに。
『風邪ひくなよ』
消えない。
何度消しても蘇ってきて。
仕方なくシャワーを終え、髪を乾かしてから、紗優の寝ている寝室へ入った。
紗優は、すやすやと眠っている。
ユウと良く似た寝顔。
見ているだけで、癒されるその顔を見て、
私は何故か、泣きたくなった。