契約恋愛~思い出に溺れて~
揺れる心音
達雄を家に送り届けて帰ったあの日から、6日がたっている。
達雄からは一度メールがきたきり。
【かなり酔ってた。ごめん。車ありがとう】
簡潔なメールで、綾乃ちゃんのことは何も書いてなかった。
どっちみち、達雄は落ち着いてからでなければ何も話してはくれないような気がするし、
私からも【どういたしまして】という返事しか出さなかった。
またしばらくすれば、週末にでも呼び出されるのだろう。
その時に詳しい話が聞ければいいと、その程度に思っていた。
でも、金曜日の夕方、達雄からかかってくるかと思った電話はなく、
何故か英治くんが電話をかけてきた。
その、携帯のディスプレイにうつった名前を見ただけで、胸がざわつく。
私は慌てて、喫煙室前の廊下に出て、その電話を取った。
「は、はい」
『紗彩ちゃん? 葉山です』
「英治くん」
『ねぇ。今日会えない』
「今日?」